中国出向に関わる税務上海ビジネスフォーラム活動報告

開催概要

テーマ 中国出向に関わる税務
日時 07月16日(土) 15:00~17:30
講師 新生会計事務所 日本国税理士 高木 慎一さん
出席 27名

はじめに

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税理士である高木さんの勉強会は今回で2回目です。因みに、前回は昨年7月で「移転価格対策を含めたグローバルタックスマネジメント」をテーマとした勉強会でした。今年はより私たちに身近なテーマということで「中国出向に関わる税務」について留意点や問題点を中心にお話し頂きました。

勉強会の内容

1.税務当局が日本人出向者に注目する理由

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平成2年から平成21年までの海外在留邦人数統計(出所:外務省)を見ると約40万人から80万人に増加していることがわかります。日本企業の海外展開に伴い在外邦人も増加し、その多くは企業から海外への出向者で、海外出向者の上位国はアメリカと中国です。

この状況に海外出向に関する税務の複雑性や納税者側の知識や準備の不足が加わると、必然的に税務当局が日本人出向者に注目することとなります。

2.日本の所得税法の特徴

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海外子会社などに出向するために出国した場合、その出向者が居住者または非居住者のいずれに該当するかで課税所得の範囲や課税方法の取扱いが大きく異なります。

尚、「居住者」とは「日本国内に住所を有する個人」か「日本国内に現在まで引き続き1年以上居所を有する個人」のことをいい、「居住者」以外の個人を「非居住者」といいます。

また、給与・賞与に係る小屋内源泉所得の範囲は、実際に勤務した場所が所得源泉となります。

非居住者の所得にかかわる源泉徴収は、原則として20%(15%)の源泉徴収とし、租税条約による軽減措置で租税条約のほうが有利な場合には、条約が優先されます。

3.海外に出向する際の税務上の留意点

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①年度の途中で非居住者として海外の子会社に出向する場合、出国時点から非居住者に該当しますが、当年の1月1日から出国日までに日本国内で発生した給与・賞与については年末調整を行います。

②非居住者として年度の途中から海外の子会社に出向した出向者の住宅借入金等特別控除は、非居住者になった場合、居住者として継続居住の要件を満たさないため、出国を含む年分以降については、家族が引き続き居住していても適用できません。

③非居住者として年度の途中から海外の子会社に出向した出向者の住民税の納税義務は、翌年の1月1日現在の住所の所在地の道府県と市町村が課税権を有するのが原則であり、住民税の賦課期日に国内に住所を有さない場合、所得割による個人の住民税の納付義務はありません。

4.海外に出向中の税務上の留意点

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①留守宅家族に支払う給与の較差補てん金の源泉徴収の要否は、出向者が非居住者に該当する場合、国内源泉所得には該当せず、源泉徴収の必要はありません。但し、この給与補てん金について、出向者の所在国においては別途課税関係が生じます。

②出向者の出国後に支払う賞与の源泉徴収は、非居住者に支払われる賞与であるため、支払金額に対し20%の税率により源泉徴収が必要となります。

5.海外から帰国する際の税務上の留意点

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海外子会社に出向中に退職し帰国した出向者に対する退職給与の源泉徴収と選択課税制度は、退職時に居住者であったから非居住者であったかにより退職給与に係る所得税の源泉徴収を行います。確定申告による退職所得の選択課税を行う場合には、還付を受けることができます。

6.本社の費用負担をめぐる問題

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①海外出向者に対する給与の較差補てん及び留守宅手当は、出向元法人と出向者間の雇用関係の継続をもとに行われるものであり、出向元法人の業務上の必要経費といえるため、出向元法人において損金の額に算入されます。

②海外子会社への出向者の家族渡航費は、出向者が相当期間(概ね1年以上)経過するごとにその配偶者を海外に渡航させ、その渡航のために通常要する費用を負担した時は、その負担した金額は当該法人にとって事業遂行上必要な経費と認められますので、損金の額に算入することができると考えます。

7.二重課税排除のためのポイント

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①居住者が海外所得税等を納付することとなる場合、一定限度内において日本の所得税から当該外国所得税が控除できます。外国税額控除を取得するためには納税者が確定申告を行うことが必要です。

②日本では国内法上の取扱いに優先して租税条約上の取扱いが適用されます。但し、租税条約のほうが不利な場合、租税条約の適用により不利な扱いを受けることはありません。(所得源泉規定を除く)。

ポイント
◇所得税と住民税の課税方法の違い
◇退職のタイミング
◇出向元法人の準備

まとめ

出向者と本社にとって切実な問題である海外出向者に関わる税務について、高木さん独特の語り口でわかりやすく説明して頂きました。昨年のテーマよりも参加者にとって身近な内容となっており、勉強会では参加者から質問や意見が数多く出されました。

SBF勉強会のために2年連続で日本から上海におこし頂いた高木さん、本当にありがとうございました。(SBF一同)

新規会員及びゲスト

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横山 弘典さん(株式会社システムインテグレータ)
榎本 潤さん(全麗雅設計(深圳)有限公司 上海分公司)
川述 国彦さん(上海启艾企展示策划公司)
和田 真宙さん(广控信息技术上海有限公司)
李 彦成さん(上海曾孫用投資)

食事会

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18:00よりネパール料理レストラン「NEPALI KITCHEN」にて(参加20名)。上海の人気レストランでの食事会でした。美味しいネパール料理を頂きながら、いつも通り楽しく美味しい時間を過ごしました。

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