中国における会計制度の動向①中国会計コーナー

第4回

中国における会計法律・法規の確立

1993年以前の中国では、「税務会計」に基づく「財務会計」が存在していたと言われるが、事実上、企業会計処理規則は全部税収政策に従属していたのは現実である。つまり「税務」と「会計」は一本化していた。例えば、当時は「損金算入・不算入」という概念ですらなく、損金不算入項目を記帳してはならなかった。

その理由としては、当時の中国では、ほとんどの企業が国有・国営企業であり、企業財務諸表を主に税務局にしか提出する必要がなかったことにある。国に任命された経営者、管理者たちを評価する一つ重要な基準は納税額であるので、「税務重視」も理解されやすいであろう。

国有企業が国の機関である税務局に財務諸表を提出することを対内的行為として認識すれば、当時未発達であった株式市場、私営企業の状況を考えると、財務諸表が投資者等の外部に提出するものとして認識される必要性は低いことも事実だった。

1993年から、中国は市場経済への転換を加速させ、その中で、会計改革も実施された。「企業基本会計準則」「企業財務通則」「行業会計制度」及び「行業財務管理制度」等一連の会計法律・法規が発布された。

「会計」が「税務」から独立するという方針が明確になったものの、「行業財務管理制度」という行政法規によって、「税務」は依然として「会計」に多大な影響力を発揮していた。例えば、税務当局の許可がなければ、企業は「資産」に対する減価引当準備金の計上ができなかった。

2001年、会計改革は第2段階に深化していた。企業会計制度と税収制度の分離は強化され、「会計法」「会計準則」等の会計法律・法規によって企業財務諸表を作成することが明確になった。

中国では毎月決算が実施されているので、毎月、管轄する税務局に「貸借対照表」、「損益計算書」等の財務諸表を提出しなければならない。これら会計制度に基づいて作成されている財務諸表によって納税すると、当然税法基準に基づく納税金額と差異がある。その差異は会計年度内で調整せず、年度会計監査をするときに、「納税調整」が行われる。

2004年1月1日から、中小企業に適用する「小企業会計制度」が実施された。

下記2点の基準を同時に満たした企業にこの「小企業会計制度」が適用される。

  1. 上場していない企業
  2. 経営規模が小さい企業

経営規模に関して、中国の「国家経済貿易委員会」「国家計画委員会」「財政部」「国家統計局」が発布した「関与印発中小企業標準暫行規定的通知」によって、定められている。下表は大・中・小企業の区別基準である。

業種 区別
項目
単位 経営規模
大型 中型 小型
工業 従業員数 2,000及び以上 300~2,000以下 300以下
年間売上 万/人民元 30,000及び以上 3,000~30,000以下 3,000以下
総資産 万/人民元 40,000及び以上 4,000~40,000以下 4,000以下
建築業 従業員数 2,000及び以上 600~3,000以下 600以下
年間売上 万/人民元 30,000及び以上 3,000~30,000以下 3,000以下
総資産 万/人民元 40,000及び以上 4,000~40,000以下 4,000以下
卸業 従業員数 200及び以上 100~200以下 100以下
年間売上 万/人民元 30,000及び以上 3,000~30,000以下 3,000以下
小売業 従業員数 500及び以上 100~500以下 100以下
年間売上 万/人民元 15,000及び以上 1,000~15,000以下 1,000以下
物流業 従業員数 3,000及び以上 500~3,000以下 500以下
年間売上 万/人民元 30,000及び以上 3,000~30,000以下 3,000以下
郵政業 従業員数 400及び以上 400~1,000以下 400以下
年間売上 万/人民元 30,000及び以上 3,000~30,000以下 3,000以下
ホテル
飲食業
従業員数 800及び以上 400~800以下 400以下
年間売上 万/人民元 15,000及び以上 3,000~15,000以下 3,000以下

この表に基づき工業企業を例として説明すれば、「従業員数300名以下」かつ「年間売上3,000万人民元以下」かつ「総資産額4,000万人民元以下」という条件を満す企業は「小型工業企業」となる。

以上の文章は「独立行政法人 中小企業基盤整備機構」が発行する「中国における会計制度と実効のある経理関係社内規程」から転載・再編集

上海誠鋭実業有限公司 叶 家胤

上海誠鋭実業有限公司 叶 家胤

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