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ブランドの設計思想と音について

ブランドの設計思想と音について

第6回 2007年3月

今回はブランドの音についてです。

早速ですがブランド固有の音ってあるのでしょうか?
もちろん ブランドの音 があると言い切った方がオーディオに対して神秘的な夢が持てるような気がしますね。

例えばマランツの場合はどうでしょうか?
原音に最も忠実であるべきだ。という信念のもと特有の癖のようなものを否定をする立場を取っています。言い換えればオーディオ的正攻法でアプローチしているともいえます。

これは簡単に言えば「ソースに入っている情報を全て出す。」というものです。
ということは
いい音のソースはいい音に聞こえ 悪い音のソースは悪く聞こえなくてはなりません。
裏を返すと
悪い音が良く聞こえるということは良い音が悪く聞こえてしまう。と言い換えることができます。
ここで、オーディオの基本となる三種類の装置の理想形というか開発最終目標は何かを整理してみましょう。

  1. スピーカー
    電器信号を正確に音波に変換するトランデュサー(変換器)です。
    原音以外の音や歪が追加されてはいけません。
  2. アンプ
    CDプレーヤーから入ってきた信号を大きくしてスピーカーに送りスピーカーをドライブします。
    このアンプはストレートワイヤー(真直ぐな線)ウイズ ゲイン(増幅する)です。
    理想のアンプです。是非試してください。と昔メーカーが宣伝していました。
    ここでも色や癖がついてはいけません。
  3. CDプレーヤー
    ディスクに入っている音を100%拾ってアンプに正確に送り込みます。
    色が着いても情報が欠落してもいけません。

もし世の中の機械がこの条件を満たしているとすればどの機械の組み合わせも同じ音がするはずです。もちろん部屋が同一条件でなければなりませんが
すなわちブランドの音を消滅させるために日夜研究開発が進められているわけです。
ここに大きな矛盾があるわけですが,こんなことは実際にはありえません。
裏を返せば未完成の部分や色づけ(機械特有の音のくせ)があるおかげでオーディオという趣味が成立するわけです。

当たり前ですが録音そのものに再生音は最も大きく影響をうけます。
以前に比べれば録音機材と録音技術の進歩により素晴らしい録音が出来るようになりました。
メーカーがある機械を「××スタジオで使用されているのでこれは素晴らしい性能の機械である。」と宣伝をするのは「プロの耳にかなった性能である。音に色がつかず不純物もまじりません。ついてはこれを使用すればお宅でも原音に近い音がしますよ。」という論理に基づくものです。
音のような感覚的なものを宣伝するにはこの論法が一番説得力ありますね。

しかし物理学的にスピーカーからフルオーケストラのあの圧倒的な音圧が再生できないというのは誰でも知っている常識です。
メーカーが宣伝でなんと言おうと我々消費者は「オーディオとは 不完全なものである」という前提で取り組まないと泥沼にはまります。

現実には完全に払拭できないブランドの音とは この音の癖のことですがこの癖がもしその人にとって心地よければいい音と感じるはずです。
例えば 塩辛やブルーチーズを思い浮かべてください。
癖があっても食べなれると忘れられない味になるのと同じです。
言ってみればオーディオとは自分の好きな味覚を探すことに似ています。

原音再生を掲げているオーデイオブランドの主張と矛盾しますが原音再生だけが正しいわけではないわけです。
また逆に どんな音でも俺が好きだからかまわないでしょ ということがいえるでしょうか?
私は最低条件として演奏家が最低ここまでの音質と物理特性で聴いて欲しいという最低ラインは守るべきと思います。
さて最低ラインを守るためにはどうしたらよいでしょう。
無駄なお金を使わずに原音に近い音を再生するためにはスピーカーの物理特性が最も重要だと思っています。
最後の最後に人間の耳に聞こえる音波に変換するのがスピーカーなわけですからここが狂うと取り返しがつかなくなってしまうわけです。
すなわち電器信号を音波に変換する際に物理的特性が不完全であってはいけないわけです。

さて現実にブランドの音はどのように確認できるでしょうか?
ひとつの例として二種類のブランドのアンプを比較する場合を考えてみましょう。
正確な物理特性をもつスピーカーを最低二種類用意する。
そしてCDプレーヤーと一組のスピーカーを固定して二種類のアンプを聞き比べればいいのです。
そしてもうひとつのスピーカーでも同じことをします。これによってスピーカーとの相性による差も確認することが出来ます。
もちろん音響特性のフラットな部屋で。

この場合 誰でもすぐに二種類の音の差は分かります。
好きか嫌いかも比較的直ぐ分かります。
しかし良いか 悪いかは分からないものです。ちょっと聞くと良くても長く聴くとだめ。とかまた音楽や天気にも体調にも影響を受けたりすることもあります。
確信のある結論を出すには非常に時間がかかります。

ここで重要なのは 優れた装置は音楽の浸透力を持つ ということです。
これは測定器では測定できないものです。
人間の耳だけが持つ研ぎ澄まされた感覚だけが聴く(感じる)ことのできるものです。
これが浸透力だと思っています。
繰り返しになりますが ブランドの音とは 浸透力の差 なのであって音質や出力や物理特性で表わせるものではないのではなのです。
試しに 生のコンサートの寸評で 「この演奏会は浸透力があった。」とは言いませんよね。
「この晩のこのオーケストラはテクニックも完璧であるだけでなくドイツのオケらしくいぶし銀の金管セクションとシルキーな弦楽セクションがあいまみえ言葉通り交響的という表現がぴったりの心に残る素晴らしい演奏会であった。」なんて感じでしょう。
もし家庭の装置でこの寸評のような素晴らしい体験が出来たら どんなに幸せでしょうか
要するにオーディオ装置を通してこの晩の音楽会のように音楽に感動できることが究極の目標と言い切っても間違いではないでしょう。

そして装置を択ぶときに このブランドだからこの究極の目標を達成できるのではないか?という期待を持たせることが出来る力がオーディオの場合のブランド力なのでしょう。
このような期待がブランドに対する憧れとなり皆さんの心の中で成長していきます。
言ってみればこれがまさに「ブランドの音」なのでしょう。

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