第2回 2007年4月
小売店舗においてCS(顧客満足)を獲得する事は大変重要である事を前号で述べましたが、 その奥行き部分を今回ご説明したいと思います。
小売業(特に百貨店)は、簡単に言えば「多くのお客さまを相手に衣・食・住に関するあらゆる商品を販売する店」と言えましょう。その商品を「販売する」という事ですが、固く言えば「販売」とはモノの所有権が他に移り、移ったモノに対しての対価が支払われる事です。しかし、単にモノと貨幣を交換するだけでしたら、自動販売機やネットショッピングで十分ではないでしょうか。
販売員は店舗の顔である!
品物の販売は売り手と買い手、つまりお客さまと販売員が存在します。お客さまが店舗に来られて、本当に満足する買物をなされるためには、自動販売機では何かが足りないはずです。お客さまと販売員との間では商品と貨幣以外にサービスという目に見えないものが動いています。商品に対するお客さまの費用対効果や所有満足感を上げてゆくのは販売員の接客や店舗環境などのシチュエーションなどが重要な要素です。中でも“オケージョンに適した接客”は販売を促進すると共にリピーターの獲得や店舗のイメージアップに直結する最も重要な要因です。
販売員が売上を左右する!
サービス業全般において、接客は「真実の瞬間」として、最もお客さまの記憶に残る場面であると言われています。ゆえに「満足」「不満」に関わらず「接客サービス」に対する関心は非常に高く、重要であると言えます。
昨今、商品の情報はインターネットや雑誌などから容易に収集する事ができます。販売員の提供する情報が、それらの各チャネルから入手する情報と同レベルまたはそれ以下だった場合、恐ろしい事にお客さまのコンプレインにつながるケースがあります。コンプレインとは、ちょっとした不満のことで、「通路が狭くて歩きにくい」とか「買物している時に何がどこにあるか分かりづらい」などの事で、いたるところで発生しています。気分的なものもあるので、お客さまもそれに気づいていない場合もありますが、潜在化しているコンプレインが定着すると顕在化したコンプレインに成長し、さらに放置しておくとクレームという明解な問題につながります。クレームになった後は、即座に問題解決しないと、顧客離れや店舗イメージの激減などに発展し、場合によっては企業の存続にまで影響を及ぼします。ですからお客さまの潜在的なコンプレインをいち早くキャッチし、組織的に改善を行う事が必要です。
クレームへの対応は後処理型であり問題対応型なのに対して、コンプレインへの対応は、前倒し型であり提案型であるといえましょう。顧客満足度を高めてゆくためには、クレーム対応に追われている企業ではなく、顧客のコンプレインをつかみ、積極的な提案をしてゆく企業体勢である事が望まれます。

大都市百貨店などではランク付けをしている!
全国(中国)主要都市の百貨店などの小売店舗で、サービスレベルなどの格付けが開始されています。商務部の計らいで、一定基準を満たす百貨店などを対象に行い、小売企業のサービスレベル環境の改善、経営の健全化、知的財産権の保護、自国ブランドの育成、小売業の規範的な発展と競争力の強化を図るのが狙いのようです。グローバルスタンダードとまでは行かないでしょうけど、これからますますソフト面が注目され、標準化を意識した本当の意味での差別化が必要となるでしょう。
2010年“上海万国博覧会”このままでいいの!?
上海の街は、世界中が注目する 2010年上海世界博覧会に向けて、あらゆる分野が猛スピードで動き出しています。既述の格付けもそうですが、インフラの整備は24時間体制で稼動しています。実に何本の地下鉄が新設されるのでしょうか?数年前の路線図とは大きく違う入り込み具合です!商業施設などのハード面も急ピッチで進められています。万博史上最大入場者数が予想されるだけに絶大な経済効果が期待されます。空港、ホテル、デパート、コンビニ、レストラン・・・どれを取っても人的サービスが必要不可欠な現状です。ハード面ばかりに目が行きがちですが、実際お客さまの継続した喜びや満足感を勝ち取るためには、サービスを提供する人たちのまごころの篭った人的サービスが最も重要な事なのです。
開催期間の184日間、どうか来場者に対して満足ゆくサービスを提供していただきたいと思います。また周辺の環境も含めて世界が注目するこの時期に、CS(Customer Satisfaction)というものを真剣に考え、街全体で取り組んでいただきたい!と切に願います。