日時 | 5月17日(土)15:00~17:00 |
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テーマ | 国際税務について |
講師 | 徳勤華永会計士事務所 徐 潔さん |
場所 | 徳勤華永会計士事務所 |
出席 | 41名 |
・基本原則
―税収公平原則…国家間のバランス、納税者への公平性。
―税収中性原則…国家は投資決定に影響せず。企業のグローバル化、発展途上国の外資導入。
・基本三要素(国により異なる→タックス・ヘイブン国ができる。)
(1)居住性(居住者・非居住者)
(2)源泉性(国内所得税・国外所得税)
(3)課税国(課税国:居住地国・非居住地国)
定義 | 国内源泉所得 | 国内源泉所得 | |
居住者 | ・中国国内に設立された企業 ・国外で設立、実際の管理機構が中国国内にある外国企業 |
○ | ○ |
非居住者 | ・国外で設立、実際の管理機構も国外にある外国企業 | ○ | × |
・対国家
―国際税務をほどよく把握:税収の保留、経済発展を促進
―国際税務を把握しない:税収の減少、経済にマイナス影響
・対企業/個人
―国際税務をほどよく把握:税金負担の軽減
―国際税務を把握しない:二重課税、税金負担の増加
→事業予測のぶれ
(恒久施設―PE)
・PE(恒久施設)問題が発生
―工事(据付等を含む)
―役務の提供(出張ベースでの業務)
―非独立代理人(本社名義、本社機能)
―その他
→登録せずに実際に法人のような行為を行なう場合、5%の営業税、見なし利益20%の25%の法人
(申告義務)
・PEとならないケース
―(倉庫等)保管機能の施設
―情報収集等のための固定的な経営場所(駐在員事務所)→課税/非課税
―準備的、補助的活動のための固定的な経営場所
・PEとなる場合の前提条件(期間)
―各租税条約により異なる(6ヶ月等)
―各プロジェクト別に計算(実質的な要求)
・PEに対する課税
―企業所得税(見なし利益に対して25%)
―営業税5%
―個人所得税(183日ルール適用しなくなる)
(タックス・ヘイブン)・税率が明らかに低い国家(地域)の基準
―実質税率が12.5%を下回る
―ホワイトリストとブラックリスト
―OECDの国際税金回避地域リスト及び基準
→中国は未決定
・被支配外国企業(中国の規定)
―中国居住者企業の概念は個人所得税規定と一致
―直接又は間接的に持分比率基準(単独10%以上、共同50%以上)
―実際支配の基準
(移転価格―TP)
・TP関連規定
―中国新企業所得税法及び実施細則
―国税発[2004]143号
―特別納税調整管理規定(草案)
・主な内容
―関連者の定義
―独立取引原則
―移転価格の調整方法
・提供資料
―関連者間取引年度報告表
―関連者間取引業務調査を受ける場合の提出資料
―関連者間取引に関わる価格、費用の規定基準、計算方法及び説明等の同期資料
―再販売(譲渡)価格又は最終販売(譲渡)価格に関する資料
―調査に関わる資料、その他企業に提出義務のある資料
―ドキュメンテーションの免除等
―年間関連取引額2000万~1億間(売買総額)の企業は簡易資料を準備
―年間関連取引額2000万元未満の企業、事前確認有効期間、国内の関連者のみと取引がある企業はドキュメンテーション免除
―ドキュメンテーションの作成要求
―翌年6/1までに作成し、税務機関からの要求があった場合15日以内に提出(滞納金あり)
―移転価格調査対象
―国内関連者間取引は税負担が同じ場合、原則として対象外
―確定申告時の関連取引の申告、同時資料の準備を行なわない企業は重点調査対象に
―追跡管理
―更正後の追跡調査期間は5年
・分析
―関連企業間取引の判断
―価格の合理性
・TP問題に伴うリスク
―中国における追加納税
―二重課税
―加算利子
―追跡調査
→外資企業の赤字はダメ。親会社から利益を保証されるべきという考え方
→シンセン、大連は移転価格の調査が厳しい。上海は比較的緩やかだが、今後、国家税務総局による上海地区調査の可能性あり。
・TP問題への対応方法
―プライシングポリシーのレビュー→親会社の言い値になっていないか?正当な付加価値に対する報酬か?
―関連取引状況の改善
―資料の事前準備
―事前確認(APA)→自己申告、税率の相談可能
→二国間協議の場合、解決までに1~2年必要。二国間の同意は困難。
(コストシェアリング)
・関連規定
―中国新企業所得税法及び実施細則
―国税函「2004」470号(新税法公布前)
・範囲
―共通で無形資産を開発或いは譲り受け、又は共通で労務を提供、受けるため発生するコスト
・原則
独立取引原則に基づきコストシェアリング協議を締結
―合理的な分担方法及び指標の確定
―参加及び退出の補償規定
―定期的な調整
―原価と予測収益の原則に基づき分担
―原価の分担は予測収益の受取額と一致する
―損金不参入の管理費用の配賦との違い
―手続き→税務局の要求による資料提出、税務局の認可を得て損金参入が可能
(利益配分)
・関連規定
―租税条約
―財税「2008」1号
・サマリー
税目 | 中国における親会社の税収負担 | |
2008年までの利益配当 | 2008年及び以降の利益配当 | |
源泉所得税 | なし | 10%又は5%(租税条約) |
→利益の所属年度による
→日本は手続きを経て海外投資に伴う海外での納税分が考慮される
(過少資本)
・目的 ―利子率の合理性に対する指摘ではない
・債権性投資の範囲及び要点
―委託借金、担保及びその他の債権性質の投資
―外資企業に対する投資総額と資本金の差額(外債枠)との区別
・具体的範囲及び基準は更に明確化する必要がある
―アメリカ、ドイツ及びフランスの特定規定(繰越控除可能)
・例
外国法人A社が500万元を中国に投資しB社を設立する。経営活動のため1000万元の資金が必要なため、B社は次の二通りの資金解決案を考慮。
案① 株主のA社が500万元の追加投資
案② 株主のA社から500万元を借金、利息率は10%。2007年のB社の売上げは1000万元で、原価及び費用(利息を含まず)は800万元。
上記二通りの方法でA社の利益影響はどうなるか?
案① | 案② | |
売上高 | 1000 | 1000 |
-原価及び費用 | 800 | 800 |
ー利息 | ― | 50 |
利益 | 200 | 150 |
税率 | 25% | 25% |
税引き利益 | 150 | 112.5 |
配当の源泉所得税率 | 10% | 10% |
税引きの配当金 | 135 | 101.25 |
+利息の税引き利益 | ― | 42.75 |
A社の手取り利益 | 135 | 144 |
(租税回避防止)→移転価格以外
・「合理的な事業目的」の判断
―税収利益を主要目的とする
―適用対象「税額の減少、免除或いは納付の遅延を主な目的とすること」
―更に広く解説が可能
・実務上の規定は現時点で不明。
→調査、納税調整の権限は国家税務総局にあり、上海市レベルの税務局では実施しない
・国内法による解決方法―外税控除
―種類
―直接控除
―間接控除
―見なし控除
→二免三減等、中国で優遇され得た利益が日本で課税対象となると、当初の目的が達成されないため日本で課税対象とならない
・APA(事前確認)
・CA(租税協議)
・タックス・プランニング
講師の徐潔さんにより、国際税務入門編として初心者にも分かり易いようにお話し頂いた(参加者のほとんどは国際税務未経験)。参加者の関心が高いタックス・ヘイブンや移転価格について、実例を交えながらの説明が大変興味深かった。参加者からは、移転価格問題における関連者の定義や取引額について質問があった。経営者には国際税務の知識が必要であり、更なる利益を追求するためには国際税務知識とタックス・プランニングが必要であることを認識した。
蓮尾 玲奈さん 上海趣意文化伝播有限公司
西村 弘さん 蘇州超維空間信息技術有限公司
秦 昌之さん 理光(中国)投資有限公司
川崎 航さん 日新租賃(中国)有限公司
鈴木 明典さん
永田 憲蔵さん 早川国際(香港)有限公司(勉強会は初参加)
蔡 琴梅さん 上海市小企業貿易発展服務中心
18:00より勉強会会場付近の中華レストラン「北京楼」にて。参加者28名。
名物北京ダックは思ったよりさっぱりしていて、北京の「燕京ビール」に良く合いました。北京ダック以外の料理も種類が豊富で、ボリューム的にも大満足でした。