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中国ソフトウェア業界の対日オフショア開発の現状上海ビジネスフォーラム活動報告
開催概要
日時 | 7月19日(土)15:00~17:00 |
---|---|
テーマ | 中国ソフトウェア業界の対日オフショア開発の現状 |
講師 | 上海宮東軟件有限公司 東 誠さん |
場所 | 上海市中小企業総会 会議室 |
出席 | 36名 |
内容
ソフトウェアのオフショア開発(オフショアリング)とは、一般に日本国内で不足気味のエンジニアを海外に求め、コストダウンを併せて実現する為に行なわれるソフトウェア開発の形態を指すそうです。
オフショア開発の基地国は中国、韓国、ベトナム、インドを中心に、ロシア、アフリカ諸国にまで展開しており、中国は、漢字圏ということもあって対日では最大の開発基地国とのこと。
ちなみに日本の地方都市(沖縄、北海道など)で行なう遠隔地開発をニアショア開発と呼びます。
日本企業がオフショア開発を行うのは何故?
- 小泉政権下で始まった公共投資予算の削減によって、人海戦術を必要とするインフラ系大規模開発のコスト削減が必須となったため。
- Java系を初めとする比較的新しい技術の高技能エンジニアの日本国内での不足。新卒者が「ゆとり教育」世代に推移した為に生じた新人教育コストの増加したことと、派遣業の規制緩和によって生じた社員技術者の減少によって若手技術者の企業内教育機会が失われ、固定雇用技術者(熟練者)と契約雇用技術者の技術格差が広がったことが背景となっている。
特に技術格差の拡大は、比較的古い技術である組み込み系エンジニアの激減を招き、更にオフショア開発を加速しています。従って、組み込み系エンジニアを中国で育成する動きも活発になっているそうです。
また、派遣による技術格差が広がった背景に、日本では派遣対象緩和前の4事業の一つがソフトエンジニアであったこともあり、請負、派遣形態を受け入れ易い土壌があったとのことです。
オフショア開発の先発国は米国。米国のソフト開発基地は、英語圏であるインドやメキシコ、南米の諸国ですが、自国内労働者保護の政策や、サブプライム問題の影響から、米国からの発注量は減少しています。
オフショア開発はこれからどうなるの?
既に多くの日本の国内インフラが中国製造のシステムによって構築、管理されているそうです(驚!)。例えば金融証券や運輸、通信、鉄道、政府系ネットなど、およそ日本で日常生活に必要なシステムは置き換わっているので、更に拡大する事は間違い無いとのこと。
しかし、高機密システムの開発や極小規模の開発は、「はべらし型開発」と呼ばれる日本国内の閉鎖環境での開発が増えると予想されているため、日本国内へのエンジニアの招聘も盛んに行なわれるようになっています。(2007年の中国からのエンジニアの日本入国は月間2000人以上。)また、契約ラボと呼ばれる中国での閉鎖環境へ日本人SEが訪問しての開発の同様に増加しているそうです。
上海宮東軟件有限公司の紹介
2005年10月に設立された、対日系企業向けに高い日本語コミニュケーション能力、日本型業務管理能力のエンジニア集団に特化した、中国内資によるソフトハウス。
新卒(ダブルスクールがほとんどです)採用が基本で、上流工程及びプロジェクト・品質管理を重点的に教育したエンジニアを中国の国内外に供給。
社内受託開発としても日産自動車系列向けシステム開発や、日系企業様Web開発を手掛ける。(日本国内と同水準の開発環境を提供。)
自社開発の対日エンジニア用教育eラーニングシステム「YoiYoi-IT」(出願中)を展開中。
常駐支援開発の現状
大規模プロジェクトの分業化が始まっており、要員の確保が困難(引き抜きやキャリアアップ志向が強い)なので、要員の補充先として、また、労働合同法の制約による人件費高騰防止策として(日本の派遣シフトと同じ傾向)。元々プロジェクトに波があり、(上流工程は日本国内で顧客を交え行なわれる事が多い)通年でエンジニアを抱えたくないなどの事情があります。
また、余剰人材の貸し借り(シェア)なども始まっているそうです。
生き残るための下流工程から上流工程への脱却
コストコントロールを担う上流(要件定義・設計)工程にシフトしなければ、下流(実装・テスト)工程だけではコスト競争に勝ち残ることが難しくなっています。
コストライバルは国内ばかりではなくインド・ベトナム・アフリカ(IT・通信は産業としての投資コストが少ない)などがあり、品質対コスト比の向上を追求して上級エンジニアを抱えると下流工程では採算が合わなくなるそうです(テナント・人件費も高騰)。
CMMIやISOの導入で組織として更に高度なミッションに取り組む必要がありそうです。
開発ラボ契約とは?
品質や機密情報保護が求められており、特定の顧客の閉鎖環境開発室を提供する事で一定のレベルを維持し(経営上もプラス)、特定のエンジニアにポジションやより良い待遇を与え、コアメンバーの離職率を減少できる(上手く行くケースは少ない?)などのメリットが考えられます。
訪日エンジニアの選別化
日本でのエンジニア格差の拡大から、中初級エンジニアのニーズはほとんど消滅(だったら日本人を派遣で使う)しているそうです。実際、送り出し側の採算確保が難しく、日本での勤務の目的が変化してきており、(上海の所得水準及び生活環境が向上して日本に出稼ぎに行く意味が無い)短期間を志望する人員と、しばらく戻りたくない人員に分化しているそうです。短期間志望者には新卒の場合、家族(特に両親が)手元から離したくないという理由も増加しているとのこと。
採用の難易度上昇と追い迫るライバル国
米国系IT企業の中国シフトに伴い中堅エンジニアの流出が昨年から続いています。
(この為更に賃金相場が上昇!)
対日開発教育機関の乱立で求職者のレベルに大きな広がりがあり、採用工数が増加しているとのこと。
インドが日本を、発注の減少した米国の代替目標と捉えて攻勢を掛けています。
(昨年既に、中国からインドへ実装工程を移行するケースが発生)
アフリカ諸国へのITセンター建設プロジェクトもスタートしています。
中国オフショア開発の未来
上海等大都市をHUBステーション(開発コントロールサイト)とし、国内辺境やインド・アフリカをコストセンター化。
日本国内中初級エンジニアの現地採用化(品質管理、顧客コミュニケーションの同質化)
国内市場向けシステムの日本への上流工程発注(設計依頼等)。
独自コンテンツの創出とブランド化(成功確立は・・・頑張りましょう!とのこと。)
日本国内のIT系派遣従業員が国内業務の減少に伴う、中国での現地採用就業。
上海オフショア開発フォーラムについて
情報交換、情報発信を通じ、中日オフショア開発の発展と、参加者の相互利益をはかることを目的に2008年1月に発足しました。(SBFを参考に発足、運営)
延べ18社19名が参加しており、オフショア開発に携わる中国、日本籍の経営者、PM、品質保証担当者、企画担当者などが参加しているとのこと。
まとめ
オフショア開発について体系的に説明して頂きました。現状や事例、また極秘資料を交えながらの非常に詳しい解説で参加者もオフショア開発への理解が深めることができました。参加者からはオフショア開発に関する関税や日本へのエンジニア派遣に関する質問が出ました。「エンジニアの残業は営業担当者の納期設定ミスをフォローするため」という持論も印象的でした。
随所に笑いのポイントをちりばめた東さんのトークにも味があり、参加者からは早くも第二回の開催を希望する声が上がりました。(東さん、よろしくお願いしますっ!)
SBFを参考に発足したという上海オフショア開発フォーラムについても、専門分野に特化した交流会ということで、今後の発展が期待されます。
総じて、参加者の満足度の非常に高い勉強会でした。東さん、ありがとうございました!
新規会員及びゲスト参加者
田中 延枝さん(上海枢軸数碼科技有限公司)
武内 隆明さん(TNC(拓知)Solutions Inc.)
川西 明男さん(上海日電管理諮詢有限公司)
食事会
18:00より。
勉強会会場よりタクシーに分乗し、徐家漚のチャイニーズ・レストラン「致真小厨」にて。参加者24名。洗練された雰囲気の店内で、美味しい食事と会話を楽しみました。でも徐家漚での食事会は何故かいつも雨。。。「雨男」は誰でしょう?