事例から見る最近の中国ビジネス上海ビジネスフォーラム活動報告

開催概要

日時 4月19日(土) 15:00~17:00
テーマ 事例から見る最近の中国ビジネス
幹事・講師 王 穏さん 開澤法律事務所パートナー弁護士
幹事補佐 三津 郁子さん 開澤法律事務所
開催場所 上海巴士大廈10階 会議室
住所:建国路525号(×重慶南路)
出席 23名

全体概要

上海ビジネスフォーラム勉強会イメージ

8年ぶりの『会社法』改正に伴い、「登録資本金の払込制度や登記条件の緩和」「会社登記事項及び書類の簡素化」等、外資企業の負担が軽減されました。同じく、『消費者権益保護法』や『商標権保護法関連』等も改正され、関心を呼んでいます。

これらの改正内容及び開澤法律事務所で扱った事例に基づいた日系企業に与える影響の解説、また最近の中国ビジネスにおいて興味深い事例を多数ご紹介いただきました。

最近は、撤退案件も多いそうです。
あれも危ない、これも危ない、こんな話がどうしても多くなるのですが事前に予防できることも多く、結構な割合で防げるので、予防対策(リスクヘッジ)が大事だそうです。

主な講演内容

クレーマーも結構いる

商品の記載漏れ、ラベル表示の不備 → 1,000元の罰金
それを狙ってクレームがでる場合もあるので注意すべき。だから各種法規を知っておかなければなりません。

1.会社法の改正について・・・3/1

会社法 1994年施行、今回は4回目の改正。

主な改正点

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①登録資本の払込登記制から引受登記制への変更
→ 見かけの資金力というものが通用しなくなる。
→ 会社のお金の有無の実態が分かりやすくなる。
→ 引受資本は5年以内に準備が必要。

②登録資本の登記条件の緩和

③登記事項及び登記書類の簡素化

  • 債権回収のトラブルも今年に入ってから増えており、信用調査は、これまで以上に力を入れたほうがよい。債権回収は自分の仕事ではないと思っている人も。
  • 取引をする場合は、信用調査は重要。表面上のことに惑わされないで、会社の信用がどうなのか、きちんと管理したほうがよい。
    例)あるオーナーが3000万人民元の会社を作る。最後は40万人民元しかない。
    会社の口座には一切お金がなく。入金が入ったあと、すぐにお金が下ろされているらしい。払込の資本金を見て資金力があるようにみえるが、実はそうではない ということですね。
    1億ドルの会社を作ると言っても、行政には拒否する権利はありません。

何が大変なのか。主な内容

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①手続き → 緩和

②登記 → 緩和

  • まずネットで申請 → 紙で役所にもっていくが、最近は全部ネットで完了できます。とにかく、簡単に会社をいっぱい作れてしまいます。
  • この傾向は、学生などには起業がしやすくなるので、歓迎されています。
  • つまり・・・
    簡潔化される → トラブルも増える
    違法行為も増加 → 投資におけるリスクも増加と考えたほうがいいですね。
  • 初回取引前は、資金力などきちんと信用調査すべきです。
  • お金がかかっても、時間がかかっても、じっくりと調査すべきです。
  • それが、クレーム対策にもなるし、資金回収にも繋がります。
  • あと、コンプライアンス管理も強化したほうがいい。
  • 外資系のサービス会社、貿易会社の設立などはあるが、工場などの設立は減っている。
  • 理論上、外資も内資同様に簡単にできるはずだが、実際は色々な指導が入って、設立できないケースが多いので、2~3割くらいは余裕を持って資本を用意すべきです。
  • 事業計画はバラ色の設定になっているが・・・・中国では予想外の出費が本当に多いので、数割ほど余裕を持った資金を何とかして作った方がよいでしょう。
  • 資本金の3割が運転資金という見解もあるので、あまり資本金が少ないというのは、とても審査が厳しくなります。
  • 資本金は自分で決めるものです。
    ①2年分の運転資金
    ②初期費用
  • 技術の資産評価についての指標も、その内求められるようになるだろう。会社法改正後、技術出資案件は無いのでまだどうなるかわからないが、可能性は高く技術を持った日本企業にとっては大きなメリットになりそうです。
  • 投資リスクが増加する。
    → 商業詐欺と登記等の違法行為が増え、投資者の投資リスクが増加。
    → 個人と企業の信用システムが確率されてないので、
  • では、どうすればいい?
    → 提携会社の背景調査の重視
    → 仲介会社にリスクと信用評価を依頼
    → リスク防止とコンプライアンス審査の強化
  • 最悪、資金回収ができないとしても、信用調査をしっかりかけていれば責任問題の回避もできる。
  • この企業は本当に信用できるのか?国営の会社でもちゃんと信用調査したすべきです。
  • 悪い噂が出たら、その時も信用調査を改めて行なうべきです。

2.消費者権益保護法について・・・3/15日施行

消費者の人身、財産、知る権利、フェアな取引、賠償における権利を保護・保証するもので事業者は必ず遵守する義務があります。

主な改正内容

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「三包」・・・「返品」「交換」「修理」の略称の保証。
対象商品の拡大
 改正前:20種類
 改正後:全商品

<<事例:ニコンの件>>

3.15晩会で報道 → 工商局の人必ずず見ているので注意

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  • 上海市工商局が、3.15晩会で報道されていた、問題のあるカメラの撤去を命令
  • 消費者300人以上が弁護士に委託し、ニコンへ集団訴訟
  • 行政機関は、ニコンに法定義務履行拒絶に対し、厳罰表明。
  • ニコンのイメージダウン。日本での株価へも影響。

<<ダブルスタンダードは嫌われる>>

アメリカではこう。日本ではこう。
では、中国では・・・ という言い方のこと。・・・この言い方は、非常に嫌がられます。

《結果的に傲慢な言い方》

  • 日本風の言い回しだとトラブルになります。
  • 特に声明文は、日本語を元にすると直訳だと趣旨がおかしくなる事があり、現地の消費者に傲慢な印象を与える可能性があり、トラブルに発展する可能性が高まります。
  • 意訳文にすることで、トラブルを回避する事ができる可能性が高まります。弁護士に目を通してもらって確認した方がよいです。
  • ちなみに、行政は日本企業への対応はかなり慎重で、話し方は比較的丁寧です。「どこが問題なのか説明して欲しい」というスタンスで、丁寧にコンタクトをとってくるのが通例です。
  • しかし、この時に「問題ない」「一部のクレーマーだけの問題」と突っぱねていると、対応がエスカレートして問題がややこしくなる事が多く、日系企業の要注意ポイントの様です。
  • 日本企業は訴訟を避けたいというイメージを持たれています。
  • しかし、プロクレーマーには注意しましょう。
  • ラベル表記には、とにかく注意しましょう。

3.商標法改正について

今回の目玉的改正内容

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①電子出願ができるようになった
②出願してからの審査期間が短くなった
③外人でもできるようになった
④「音声」の登録もできるようになった

  • 商標出願は、登録できるか検索する
    → 半分くらいは却下され、一部しか認可されない事が多いようです。
  • 先に登録されてしまうケースがこれまでは色々あったが、その商標を過去に沢山使っているという実態を証明できれば勝てる可能性が出ました。(施行されたけど仮説の段階)
  • 異議申し立ては、商標が3年未使用ならば申立可能です。
  • 逆に、過去3年商標を使っている証拠がないと、商標権を取り消しにされてしまうリスクもあるということです。使った証拠(商品、パンフ、展示会パネル等)があれば問題ない
  • 個人が商標登録している場合、お金目的なので買取りが可能ですが、外資系企業とわかると、買取り価格を釣り上げる可能性が大です。
  • ライバル企業が商標登録した場合は
    → もう取り返せないし、使えません。
  • ちゃんと自社で商標権を管理しましょう。

4.その他の事例

日本から来て着任したばかりの人が見舞われやすい問題。
お問い合わせが多いものから・・・

債権回収

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  • 普通によくあることで、中国系企業も悩まされています。
    → 予防策として、信用調査・きちんと契約。
  • お金を回収しきるまでは、付きっ切りで。
  • 相手にお金さえあれば8割回収できる。(強硬手段が日本以上に取れる)しかし、お金がなかったらどうしようもありません。

不正

  • 集団争議以上の問題。
  • 技術職が情報を漏洩とかの方が深刻。
    → お客様が減ることにつながり、数千万ドル単位での利益損失に繋がります。
  • 不正は立派な犯罪です。刑事犯罪とかにもなるので教育することが大事です。

集団争議

  • まだ目に見えるから分かりやすい。
  • 会社に不満がある社員たちが、出荷を止める行為はよくある。
  • 経営者が社員に拉致、監禁、恐喝されても、何もできない。
    → 警察は何も出来ない。警察は、労働債権のトラブルには介入しない。民事不介入。
  • 暴力沙汰になったら警察が動いてくれる。それ以外は動けません。

その他

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出国停止処分

  • 裁判継続中は出国制限がかかり、解決 or お金を裁判所に入れない限り、出国できません。
  • しかし、乱用されているケースもあり「オーナーが私の給料を払ってくれないから、出国を止めて」みたいなこともあります。
  • 地方では、すんなり受理されることもあるので、予測ができない事が一番怖いところです。

環境保護の動き

  • 環境保護施設がないと生産停止です。

商業賄賂 → 中国ではまだ横行しています。

  • 渡さないと事業が進まないこともあり。他の行政が、日系企業に調査協力を依頼されてくる事もあり、高官が捕まっている事もあり、これから色々増えるでしょう。
  • ケースバイケースで対応するしかできないし、万全の対策もなく、企業にとってはやりにくい問題です。

その他豊富な事例で詳しく教わりました

王先生、本当にタメになりました。ありがとうございます。

初参加者紹介

  • 董 雨澤さん
  • 久米 基温さん(上海若木機械設備有限公司)
  • 榊原さん

実行委員からの報告・・・叶 家胤さん

  • 5月例会:17日 叶 家胤さん 増値税のお話
  • 6月例会:21日 中川 秀樹さん(创天昱科(深圳)有限公司) 大気汚染のお話
  • 7月例会:東 誠さん(上海坦思計算機系統有限公司) 俳優活動について
  • 8月例会:葉 紅先生(春澤中医) 漢方による医食同源について
  • 10.11月例会:幹事を募集中

食事会

時間:18時~21時00分
出席:17名
会費:110元/人
会場:滴水洞 茂民北路

湖南料理の名門です。
いつ行っても辛いが美味しいですね。
つい食べ過ぎ飲み過ぎの楽しい一時でした。

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