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2011.10.22|外国人の社会保険加入、最低賃金の引き上げ、その他新たな動向

2011.10.22|外国人の社会保険加入、最低賃金の引き上げ、その他新たな動向

開催概要

テーマ 外国人の社会保険加入、最低賃金の引き上げ、その他新たな動向
日時 10月22日(土) 15:00~17:30
幹事 開澤法律事務所 弁護士 王 穏さん
出席 44名

はじめに

法律関係の勉強会は久しぶりです。今回はSBF会員で、弁護士でいらっしゃる王隠先生より、今一番ホットな話題「外国人の社会保険加入」についてお話し頂きました。

勉強会の内容

一.外国人の社会保険加入新規定

1.法律規定

「中国国内で就職する外国人の社会保険加入暫定弁法」計12条、2011年10月15日から施行 →勉強会(10/22)時点で、上海市ではまだ実施細則の作成途中だそうです。11/20前に実施細則が発布され、実施の運びとなると推測されているそうです。 →各都市とも外資系企業の投資・進出先としてのイメージダウンを懸念し、他の都市の様子を見てから決めるだろうという見方もあるようです。 →管轄各地域により実施タイミングは異なりますが、遅かれ早かれ実施はされるとのことです。 →外国人の賃金が高く、就業人数も増加しているため、納付額が大きく、非常に魅力がある。

2.適用範囲

1)中国国内で法により登録または登記する企業、事業単位、社会団体、民弁非企業単位、基金会、弁護士事務所、会計士事務所等組織が方により雇用する外国人;2)海外雇用主と雇用契約を締結後、中国国内で登録または登記する分枝機構、代表機構へ派遣された外国人。 →中国で給与をもらう外国人全てという理解だそうです。

3.保険範囲

①従業員基本養老保険
②従業員基本医療保険
③労災保険
④失業保険
⑤生育保険
→社会保険全般については、将来の基金不足も懸念されており、実際に享受できるとしても17~18%前後となるのではないかという見方もあるそうです。
→医療保険については、最上級とされる現地の病院でも外国語対応の整備が進んでいないため、実際に外国人が利用することができなければ、医療保険の恩恵が享受できないのではないかという見方もあるそうです。

4.保険待遇

1)社会保険に加入→条件を満たす→社会保険待遇を享受する。
2)規定の年金受給年齢に到達する前に帰国した場合、その社会保険口座は保留される。再度中国で就職する場合、納付年数は累計計算とする。本人が書面で社会保険関係の終止を申請する場合、社会保険口座内の金額は一括で本人に支払われる。
3)死亡した場合、社会保険金は相続される。
→年金受給については、中国国内の各都市間でも受取システムが整備されておらず、海外での受給手続は非常に繁雑になるという見方もあるそうです。

5.生存証明

月ごとに社会保険待遇を享受する外国人の義務
毎年、
1)外国大使館、領事館が発行した生存証明の提出
or
2)居住国の関連機構により公認、認証され且つ外国大使、領事館により認証された生存証明
例外:自ら自身の生存を証明

6-1会社のコスト(上海)

外国人社員の月給を社会保険料基数の上限(11,688元/月)で計算した場合。
労災保険料の調整幅は5段階。上方調整後の最高比率は雇用者の納付基数3%を超えない。下方調整後の最低比率は納付基数の0.5%を下回らない。
新規定実施前と実施後の保険料の比較→約5,600元のコスト増(企業分&個人分合計)
(労災保険料は0.5%で計算)

6-2会社のコスト(北京)

外国人社員の月給を社会保険料基数の上限(12,603元/月)で計算した場合。
新規定実施前と実施後の保険料の比較→約5,100元のコスト増(企業分&個人分合計)
(労災保険料は0.5%で計算)

6-3会社のコスト(広州)

外国人社員の月給を社会保険料基数の上限(10,089元/月)で計算した場合。
その他の社会保険は納付基数上限13,623元/月に基づき計算した場合。
養老保険納付比率→非広州市城鎮戸籍標準
医療保険納付比率→城鎮戸籍、同種類保険
失業保険納付比率→城鎮戸籍
新規定実施前と実施後の保険料の比較→約4,000元強のコスト増(企業分&個人分合計)

6-4会社のコスト(深圳)

新規定実施前と実施後の保険料の比較→約3,500元のコスト増(企業分&個人分合計)

6-7その他主要都市の会社のコスト

7.現行制作

各地とも社会保険実施細則なし。
原政策を執行。強制ではない。
養老、医療、労災保険のみ参加できる。
具体的納付率は実際の規定に準ずる。
広州→ドイツ、韓国籍社員以外の外国人は社会保険に加入できない。
→中国とドイツ、韓国間では社保に関する協定が締結されているためだそうです。いずれ日中間でも社保に関する協定が締結されることが予想されるそうです。(3年後かという見方もあるように、まだ時間がかかる模様です。)その場合、いずれか一方の国のみでの納付となるそうです。

二.各地最低賃金調整の動き

1.政策規定

上海
「上海市人的資源と社会保障局の本市最低賃金標準の調整に関する通知」
一、最低賃金は1,120元→1,280元
以下の項目は会社が別途支給する:
(一)法定勤務時間延長分の賃金
(二)中番、遅番、高温、低温、坑内、特殊勤務環境条件手当て
(三)個人が法により納付する社会保険費と住宅積立金
(四)食事手当、通勤交通手当、住宅積立金
二、最低時給は9元→11元、社会保険費は会社により別途支給
三、最低月給は全日制の就業者に適用、最低時給は非全日制の就業者に適用

北京
「北京市2011年最低賃金基準調整に関する通知」
一、北京市の最低賃金基準:5.5元/時間→6.7元/時間、960元/月→1,160元/月
以下の項目は会社が別途支給する:
(一)中番、遅番、高温、低温、坑内、有毒有害特殊環境条件で作業する手当て
(二)残業代
(三)労働者個人が納付する各項目の社会保険費と住宅積立金
(四)国と北京市が規定した最低賃金基準に含まれないその他の収入
二、非全日制従業員:最低賃金11元/時間→13元/時間
法定休日最低時給:25.7元/時間→30元/時間
以上の基準は雇用者と従業員本人の納付する養老、医療、失業保険費

3.最低賃金の範囲

最低賃金は労働者が法定勤務時間内に通常の労働を提供することを前提に、所属企業より支給されるべき最低労働報酬のことを指す。
以下の部分は含まれない:
(1)残業代
(2)中番、遅番、高温、低温、坑内有毒有害特殊環境条件で作業するときの手当て
(3)労働者保険、福利待遇
その内、労働者は個人の原因で法定勤務時間内に通常の労働を提供しなかった場合、同期間内の労働報酬も最低賃金基準を適用する。

4-1上海市最低賃金調整のデータ

4-2北京市最低賃金調整のデータ

5.最低賃金にかかわる内容

1)法定勤務時間内に通常の労働の提供で取得する報酬。
2)試用期間の賃金。
3)派遣社員の待機期の賃金(派遣会社により支給)。
4)病気休暇中の給与又は疾病救済費は当年の最低賃金の80%を下回ってはならない。
5)最低賃金<休暇給与の計算基準≦月給の70%
6)年棒制又は考査期で支給される労働者に対し、会社は毎月最低賃金を下回らない基準で年末又は考査期満了後決済する。
7)会社は作業停止、生産停止で給与支給時期(一期)を超えて支給しなかった場合、労働者と約定した基準で賃金を支給できるが、最低賃金を下回ってはならない。
8)労働者が労働規律又は規則制度を違反して会社に処分され且つ賃金を減少された場合、減少後の賃金が愛鄭賃金を下回ってはならない。
9)労働者が個人の原因で会社に経済損失を及ぼした場合、会社は法により賠償を請求し、且つ賃金から賠償費を控除する場合、控除した部分は当月の賃金の20%を超えてはならず、且つ控除後の賃金は本市の最低賃金を下回ってはならない。

<事例>
Aさん
2008年1月「労働契約」(当年の最低賃金基準は960元/月)
月給=基本給800元+食事手当100元+四大祝日手当1200元+夜勤手当300元
2008年1月~2009年10月出勤
勤務帯6:00~6:00(翌日)一日出勤、一日休み
2009年10月、労働争議仲裁委員会へ裁判提出
08年~09年の給与の最低賃金より低い分及び残業代の支給を求める。

労働争議仲裁委員会
(1)食事手当、四大祝日手当は手当であるので、最低労働報酬には含まれない。基本給の800元で最低賃金基準を下回った分を補償するべきである。
(2)8時間以外の休日、法定休日に出勤することは、残業を証明できる根拠がないため、この期間の出勤を当直と見なす。残業代の基準ではなく、当直給与の基準により支給する。

<事例分析>

【問題】
当直給与はどう計算するか。

【分析】
現行の法律法規は当直の概念を規定していない。現在の広範な認識では、当直とは会社が安全、消防、休日等の必要で、臨時に労働者を本職と無関係の非生産的仕事に従事させること。例えば、留守番、電話の受取り等(休憩時間有)。一方、残業は労働者が雇用先の要求に応じ、正常の勤務時間帯以外(8時間以外、休日、法定休日)の時間に引き続き本職に従事すること。
会社は実情に基づき、専門の規則制度を設立し、当直賃金の基準を確定する。法律は当直給与を強制的規定していないため、当直賃金は残業代の基準で計算する必要はない。当直は法定時間内の仕事ではなく、最低賃金の調整範囲に属されないため、当直賃金を最低賃金基準以上にする必要もない。

三、ホットイシュー

◆「外資企業の国内企業の合併・買収に対する安全審査制度の設立に関する通知」

外国投資者の国内企業の合併・買収は、取引の実質的内容と実際の影響で安全性審査の範囲に属すか否かを判断する。外資投資者は如何なる方法でも合併・買収安全審査を会費してはならない。代理保有、信託、複数回再投資、賃借、貸付、協議制御、海外取引等方法を含むが、これらに限らない。

◆刑法修正案(八)

「悪意の賃金未払い」は犯罪者として追求される。

財産移転、隠匿等方法で労働者の労働報酬の支給を回避する又は支給できるが支給を拒否し、その金額が大きく、政府関連部門に要求されたが支給しない場合、三年以下の有期懲役又は拘留に科し、併せて又は罰金を科す。状況が極めて深刻な場合は、三年以上七年以下の有期懲役に科し、併せて罰金に科す。
会社が前条を犯した場合、会社に罰金を科し、併せて直接管理人とその他責任者を前条の規定により処罰する。
改善すべき問題:報酬支給を命じる権利を有する部門の明確化、及び政府部門が不作為の時の対応処置

質疑応答

多くの参加者より質問が出され、王先生より詳しく回答して頂きました。

まとめ

日本企業及び中国で仕事をする日本人にとって関心の高い「外国人の社会保険加入」と「最低賃金調整」の問題について、王隠先生より現時点での最新情報を非常にわかりやすく説明して頂きました。中国の社会的背景を織り込んだお話は大変興味深く、2時間半の勉強会がたいへん短く感じました。

新規会員及びゲスト

安良岡 祥宏さん(上海艾傑飛人力資源有限公司)
佐藤さん(上海艾傑飛人力資源有限公司)
辻さん(上海艾傑飛人力資源有限公司)
藤村さん(上海艾傑飛人力資源有限公司)
江間さん(上海艾傑飛人力資源有限公司)
朴さん(上海清環環保科技有限公司)
板谷 圭一さん(デロイト上海)
小貫 幸男さん(上海品貫貿易有限公司)
黄 妍さん(上海品貫貿易有限公司)
蒋 国東さん(上海品貫貿易有限公司)
王さん(上海開澤法律事務所)

食事会

居酒屋「白木屋」にて(参加27名)。食べ飲み放題コース。
初参加者も交え、いつも通り楽しくお酒を酌み交わしました。
実行委員の叶家胤さんが所用で食事会欠席のため、閉会時間がいつもよりも遅くなってしまいましたが、歓談は尽きず、料理も美味しく豊富に出ましたので、大多数の方が最後までお付き合い下さいました。
ありがとうございます。

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