中国税務事情:増値税とは?中国会計コーナー
①増殖税とは?
「増値税」とは、中国国内で商品(製品)の販売、または加工・修理等の労務提供、及び輸入商品や納税対象となる労務に対して課税する税金である。
②特長
- 一般性
農業と不動産販売以外、全ての製造業と流通業及び加工業と修理業が対象となる。 - 外税である
「増値税発票」に、納税対象となる売上「全額」と「税額」を別々に記入する。(下記を参考)
③納税企業の種類と税額計算
- 小規模納税人の場合
納税額=課税売上高×税率
(税率:製造業6%、商業4%) - 一般納税人の場合
納税額=課税売上×税率―仕入税額控除(図①を参照)
(税率:17%、特例率:13%等)
※特例率は食料、新聞、図書、農業用品等特別に定められている。
④「小規模納税人」の認定基準
- 「小規模納税人」の基準を超える企業。
- 「増値税」関連の経営活動が常に発生して「一般納税人」基準に達している非企業組織。
- 企業会計制度が健全で、関連法律どうり「増値税」の納付・還付手続きを行う能力のある「小規模納税人」企業。
- 独立採算制度でない支社・支店等の場合、その支社・支店等は年間の納税対象となる売上が「小規模納税人」の基準を超えなくても、本社が「一般納税人」資格を所持していれば、「一般納税人」資格を申請することができます。
- ガソリン・スタンドはすべて「一般納税人」となります。
⑥「一般納税人」の申請資料
- 営業許可書
- 定款と関係契約書(所轄する税務局によっては、社内会計制度が必要とされる)
- 銀行口座証明と金庫の購入「発票」
- 最低2名が会計師、1名には「助理会計師」以上の資格が必要とされる。
(所轄する税務局によっては、会計師に対する要求がより高いことがある) - 「増値税一般納税人申請認定表」2部
- その他所轄税務局の必要材料
※「一般納税人」資格は年1回の審査と更新が必要とされる。
⑦納税対象となる売上
- 課税対象となる商品及び労務の代金
- 代金以外の費用。例えば、手数料・違約金・包装費用・保存費用・運賃等
- 「消費税」:「消費税」は内税であるため、その税額を「増値税」の課税対象売上に算入しなければならない。
A:販売数量などによる値引販売の場合は、一の「増値税専用領収書」に販売価格と値引額を同時に記入すれば、値引後の価格が納税対象となる。
B:早期支払などによる値引販売の場合は、一種の融資活動と見なされるため値引は認められない。
C:商品を引渡した後、品質等に欠陥が発見され返品を要求されず、値引が要求された場合は、その値引は認められる。
⑧輸入商品の「増値税」計算
A課税対象金額 = 税関での申告価格+関税+消費税(消費税対象商品)
増値税金額 = A課税対象金額×適正税率
⑨繰越
売上税額が仕入税額(還付批准税額)より小さい場合、控除できなかった仕入税額は次の納税期間に繰越される。そして、翌期以降の納税期間で控除されない場合には継続的に繰越されることとなる。
⑩「増値税」手続きと会計処理(「一般納税人」の基本税率を17%とする場合)
※図①を参照
※A社が商品を100元で仕入、その仕入商品を全てZ社に300元で販売したことを前提とする。
- A社は、Y社から商品を100元で仕入れる。
- A社は、Y社が発行する「増値税専用発票」をもらう。100元の商品代金と17元の「増値税」は別々に記入される。
- A社は、117元をY社に支払う。(A社の会計士は以下の会計処理をする)
借方:商品 100RMB
未払増値税-進項税 17RMB
貸方:応付帳款 117RMB
「進項税」は将来的にその税金対象となっている商品を販売した時に還付される税金である。中国の会計帳簿と財務諸表では「進項税」は資産ではなく、負債である「未払増値税」のマイナス計上としている。 - Y社は、増値税17元を所轄税務局に支払う。(Y社の仕入金額が「0」の場合)
その17元の増値税はA社の負担分であり、Y社は納付代行をしているだけ。 - Y社は、所轄税務局から納税証明(17元)をもらう。
- A社は、Y社にもらった「増値税専用発票」を所轄税務局で登録する。先の会計士仕訳で計上された「進項税」は税務局での登録手続き(スキャン)を行ってから、正式に税務上の「未還付税金」になる。
登録をされた仕入「増値税専用発票」は税務局から還付を受けれ証明になるため、金庫で保管しなければならない。それは「一般納税人」申請時、金庫購入発票を税務局に提出しなければならない理由である。 - A社は、Y社からの仕入商品を全品Z社に売る。(A社は仕入商品を部品として全部自社製品に組み入れ、その製品を全部Z社に売る。)
- A社は、Z社に「増値税専用発票」を発行する
- A社は、Z社からの商品代金351元を売掛金計上する。(増値税17%含む)
(A社の会計師は以下の会計処理をする)
借方:応収帳款 351RMB
貸方:主営業務収入 300RMB
未払増値税―銷項税 51RMB
「銷項税」は購入先の負担する税金であるが、販売先は代行納付しなければならない。この時点で「預かる税金」として未払増値税計上する。 - 仕入分の商品を売ったので、「2」の仕入で支払った増値税17元の還付を所轄税務局に申請する。
- A社の所轄税務局は還付申請を批准する。(即ち仕入税額控除と同意義)
- A社は、増値税(差額34元)を所轄税務局に支払う。(支払増値税=銷項税(51元)-進項税(17元)=34元)
- A社は、所轄税務局から納税証明(34元)をもらう。
「小規模納税人」は還付申請できないので、このような煩雑の手続きをしなくてもいいが、「一般納税人」の場合、毎月「増値税申告表」を税務局に提出しなければならない。その「増値税申告表」には、当該月の「進項税」総額と「銷項税」総額を記入する。「進項税」金額が「銷項税」金額より多い場合、当月の増値税を納付しなくてもいい。逆であれば、その差額分を増値税額として納付しなければならない。
この様に、増値税は付加価値に対して課される税金であると認識できるが、毎月の未還付税金と未払税金合計金額の差額による納付方式と厳しい「増値税専用発票」制度によって、会計処理は非常に煩雑になっている。先に挙げた例では仕入商品を一括販売できたという前提であるが、現実には一回に仕入れた商品を分割で販売する場合が多い。その時の会計処理は更に複雑となる為、事前に「増値税専用発票」の取得、確認、処理、保管等の制度を確立しなければ、会計処理は混乱し、税務上も問題となりかねない。
※当ページの内容は掲載当時の情報であり、将来に渡ってその真正性を保証するものではありません。
※法令等の改正や運用の変更等により現在と異なる場合があります事を、予めご了承ください。