中国における会計制度の動向③ 注冊会計師(公認会計士)と年度監査中国会計コーナー
中国に進出している外資系企業は毎年注冊会計師による年度監査を受け、その「審計(監査)報告書」に基づいて、各政府部門の年度監査を受けなければならない。
外資系企業の年度監査は一般的に1月~3月の間で行われる。日本と違い、中国には年度監査による納税調整に特別の月を設置していないため、納税調整および監による会計調整仕訳は、監査報告書が出された月で行い、その月の会計処理と混在しているため、毎年前年度の納税調整、監査による会計調整が行われる当月の財務諸表は混乱することになる。
毎月決算しているので、前年度年末(12月31日)の財務諸表をすでに管轄する政府部門に提出済であるため、企業は前年度年末の財務諸表を調整できない。だから、納税調整と監査による会計調整を含める前年度の決算数字を「審計報告書」でしか確認できない。
一般的に、「審計報告書」は、大きく前後2つの部分に分けることができる。前段は「会計法」、「会計準則」等の会計法律・法規に基づく会計監査である。後段は「税法」との税務法律・法規による税務監査である。その部分の「納税調整表」によって、会計基準と税務基準の差異による発生した納税額の調整がされる。そして、企業はその「納税調整表」に基づいて追徴課税、或いは税金還付申請を行う。
「審計報告書」の構成から、中国の年度監査に「会計監査」と「税務監査」が含まれていることが分かる。要するに、年度監査を実施する注冊会計師は税理士の仕事も兼務しているのである。
「会計」と「税務」両方の監査をする注冊会計師は、「会計」と「税務」の区別をもっとも理解できるはずであるが、残念ながら、会計師と同様に、注冊会計師の多くも「会計」と「税務」の区別ができない。
一部の注冊会計師は、「最後に税法基準に基づいて調整されるから、普段の会計処理も税務基準で行うべきである」という観点をもっている。
企業の会計師にとって、作成する会計資料は、全部注冊会計師の監査によって正当性を認定されるので、極端な例ではあるが、注冊会計師は神様であると認識している会計師もいる。だからこそ、注冊会計師の観点は企業の会計師に非常に大きな影響力がある。
上記のような観点を持っている会計師による監査を受ける会社は、自社の会計制度を事前説明し、「会計」と「税務」を分離して記帳するという原則を明確にしなければ、監査に問題が発生するだけでなく、自社の会計師や、今後の会計処理にも大きな影響を受けることになる。
注冊会計(会計事務所)が自社会計制度の施行に大きな影響を与えることを考えると、その選択は困難であったとしても、慎重に選択しなければならない。場合によって、中国会計事情と自社状況を理解できるコンサルティング会社に相談した方がよい。
会計法律・法規の発展、会計師制度、及び注冊会計師制度と監査制度をトータル的に見ると、中国における会計制度の動向を把握できる。それは、法律・法規が先行し、実務はまだまだ遅れている現状である。
企業の経営実態をより正確に把握するために、中国は国際会計基準を取り入れ、その認識を広めようとしている。「計画経済」の痕跡はまだまだ濃い現状では、企業内部の会計制度を適切に策定することによって、中国会計制度の変化の潮流に乗っていくことが、進出し、またはこれから進出する日本企業の課題である。
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