第9回 2007年11月
日系企業は人材の現地化は避けて通れません。中国で人材を現地化するためには、育てた中国人を如何に定着化させるかが鍵となっています。
中国では、会社に属するよりも「老板(ラオパン)」に属する
中国人の忠誠心はどこにあるか?会社や職場という組織には希薄であることは、既に学んだとおりです。中国人の多くは、尊敬する個人に属します。尊敬できない者が上司になった、あるいは尊敬する上司がいなくなったとすればその部下は動くと思うべきです。これは、世界標準でもあり、中国はそれが当然とやや強いだけです。
このシリーズ①での事例2を再度示します。
事例2 子離れを許さない親会社
蘇州工業団地にある日系成型B社の総経理はしっかりとしており、毎年の事業計画と投資計画・採用計画すべてを董事会に出して承認を得ている。当然、B社の事業計画範囲内のことは総経理の判断で進められるはずである。
それでも、親会社の顔をたてようと総経理は時々お伺いをたてていた。しかし、親会社からの返事は必ず何かしらの難癖をつけてきた。「どうしてその設備が必要なの?」「どうしてその人が必要なの?」「もっと安いものはないの?」「何々は相談もなく買ったがどうして?」等々。
親会社の担当取締役は、そう言わないと自分(親会社)の権威が落ちるとでも思っているのか、また、董事会で議論し承認を得られた事業計画を無視しているのか、その計画を作成するまでの苦労も何も考えていなく、立場上追及しているのみである。この総経理の将来は、次の3コースである。
- プッツンしておかしくなり解雇される
- 親会社を無視した行動に出て解雇される
- 無気力になり、親会社の方ばかり見て、任期だけ全うすることに専念する。
何れも、B社がおかしくなるのは明白である。
この総経理は、2のコースとなりました。親会社を無視するつもりはなかったものの、現場では即断即決が求められていますから事後報告・承認が増えてきました。担当役員は、それを「親会社を無視した」行為ととらえ、社長に進言し解雇に追い込まれました。その結果、総経理交替後半年以内に課長以上の幹部全員が退職しました。彼らの退職理由は、「尊敬する総経理をいいかげんな理由で退職させる会社にはいられない」というものです。
まさに、彼らは老板に属していたわけです。
上海には、コンサルタント会社や人材会社が多数あります。
この業界は、中国人資本であれば直ぐにでも作れます。そのためか、分離独立や合併や提携などの離合集散が盛んです。その時の社員・幹部の動きを見ていると総経理の尊敬度合いがよく分かります。会社が分離したとき、幹部がどちらに付いていくかで明確です。どちらにも義理があって付いていけない場合は退職している、等の現象は度々見られます。
退職を防止対策に王道なし
やめて欲しくない者の退職を防止するには、安直な秘訣はありません。総経理が尊敬され、経営方針や経営目標を社員と共有化すべく努力する、という地道な経営をすること以外に道はありません。
すなわち、次の10項目です。
- 総経理は、社員から尊敬
- 会社に、社員が誇れる経営方針・風土
- 会社は、尊敬される上司となるような幹部教育をしているか
- 会社の目標・事業計画はあるのか、それを作るために幹部を参画
- 各部門の目標はあるのか、それを作るために社員を参画
- やる気の起こる適正な人事評価制度はあるか
- 成果に報いやすい給与制度はあるか
- 不正を許さない風土と仕組みができているか
- 部門長は部下に対して個人目標を達成するための教育はしているか
- 社員に個人目標は与えているか、作らせているか
難しいですねー。
これらは誰もやってくれません。総経理はじめ幹部ご自身が先頭になって、必死にやらない限り絶対にできません。
各項目10点として、100点満点です。自己採点して50点以上ならまあまあでしょう。毎年少しずつ満点に近づけてください。
最後に、報道記事から気になる情報
「中国で2009年にも労働力不足が発生するとの専門家の予測発表」
昨年8月31日付中国青年報によると、中国最大の政府系シンクタンク、中国社会科学院人口・労働経済研究所の蔡所長が驚きの調査予測を明らかにした。
蔡所長によると、中国の人口は2030年にピークを迎え、14億3,900万人に達する。これに合わせて2015年には労働人口の増加が横ばいになり、2020年には減少に転じるという。今後も経済成長が続くことが予想され、労働需要は引き続き上昇。この結果、2009年にも中国全土で労働力不足が表面化するとしている。蔡所長は経済発展のスピードが早ければ労働力不足はさらに早く到来するとも述べており、最近の好調な経済成長が労働力不足を加速させる可能性も出てきている。
「中国は安くて豊富な労働力を有する」は、神話となりつつあるようだ。