人材の現地化①経営管理コーナー
日系企業は人材の現地化は避けて通れません。なぜなら、日本人を派遣して経営していたのではどうしても高くつきます。日本人では、言葉の問題やコミュニケーション下手という実務面の問題もあります。それよりも、中国で中国人を使って経営するには中国人が幹部であることが理想であるからです。
日本での、外資系企業の人材現地化状況を見ればよく分かるはずです。いや、それは日本だから、日本人だからできたことだとの反論もあるでしょう。
では、中国で現地化するために、どんな中国人をどうやって活用するのか、こんな観点から考えて行きたいと思います。
1.中国の縮図をみる交差点
中国の交差点を観察してください。
この状態は、日本人から見れば異常。中国人から見れば当然??
この状態を社内に持ち込んでもよいか?
まず公安が取り締まっていない交差点を見てください。バイク・自転車の大部分が信号無視です。歩行者も同じです。また、信号は守っていても、必ずというぐらい停止線の外で待ち、右左折車の邪魔をします。右左折車は、クラクションで歩行者を追い払いながら進みます。ルールは全くの無視です。
それぞれに、理由があります。
急ぐから、どうせみんな守っていないから、自分だけ守って何の得がある、やらないとやられる、危険、そんなことは教わっていない、悪いこととは知っているが捕まっても注意されるだけだから・・・・・とキリがありません。
この交差点姿を、会社に持ち込まれたらおしまいですね。しかし、現実は、放っておけばこのとおりです。取り締まるべき管理監督者でさえも、その監督と指導をしなければ作業者と一緒にさぼるし、不正行為を働きます。かつての国営企業がそうでした。
御社の状況は如何ですか?下表でお考えください。
ケース | 交差点の状況 | 御社の状況 |
---|---|---|
1 | 如何に取り締っても、ルールは無視される | 経営者が見回っても、ルールは無視される |
2 | 警官が取り締まっていれば、ルールは守られる | 管理者あるいは、経営者が見回っていれば、ルールは守られる |
3 | 交通指導員が取り締まっていれば、ルールは守られる | 監督者が見回っていれば、ルールは守られる |
4 | 誰も取り締まらなくても、ルールは守られる | 誰も見回らなくても、ルールは自主的に守られる |
交差点ルールとは、次のように明確で、ほぼ世界共通です。
- 赤信号は止まれ、黄色は注意、青は渡ってよい(人間も自転車も自動車も同じ)
- 停止線の内側で待つ
- 歩行者優先
- 右折車は、歩行者の横断を妨げない範囲で赤信号でも右折してよい
- 上海中心部ではクラクション禁止 その他
しかし、守らせない、教えないことから有名無実となっています。
ましてや、ケース1のように、公安(経営者)が見ていても守らないような交差点(企業)にはルールがないと同じです、いや、あっても守らせていないのは無法地帯と同じで最悪です。企業では、経営者の資質が問われます。
一歩一歩、ケース4に近づけなければ現地化などは夢物語です。
2.中国での人材採用
中国で人を採用し、活用するには当然現地事情を理解する必要があります。
前号まで「異国で働くには異国の文化を知る」ということを書きました。中国では、会社という組織に対する信頼は希薄です。信頼できるのは一族郎党あるいは親分子分という身の回りの存在だけ、「老板(ラオパン)」といわれる親分との関係で組織が成り立ち、その老板への信頼関係で決まります。よくも悪くも持っている中国人気質とその背景や宗教観などの文化は肌で感じ取らなければ理解し会えません。相手を知らなくして付き合いもできず、使うこともできません。命令や権力だけでは動かず、相手の言葉や行動の背景を理解した上でどうするかを考えることが重要だ、とも学んできました。
中国で実際に人材を採用し活用するためには、もう少し勉強する必要があります。
幹部の採用確率を高めるのも経営者次第
中国人幹部採用については、人事コーナーで学んでいただくとして、ここでは最終面接結果、採用通知を出しても入社しない者が多いという、経営者のお嘆きについて考えます。
採用通知を出しても入社しないのは、応募者から入社拒否されたと認識すべきです。通常は、幹部候補生の最終面接は総経理あるいは高級幹部が行ないます。そして、応募者は、自分の将来を托せる経営者がいる企業であるかどうかを含めた双方向面接です。嘆くより、入社拒否された理由を追求すべきです。
- 経営者が嫌われた
- 経営方針が嫌われたか、明確に説明できなかった
- 教育制度を含めた人事制度に夢をもてなかった
夢を持って応募したが、事前のイメージと現実との乖離が大きく入社拒否されたのです。
採用確率を手っ取り早く高めるには、1次面接で採用通知をだせばよいでしょう。しかし、今度は退職率が問題となるでしょうね。企業として「根本的な課題解決」をしない限り採用も困難だという事例です。
「根本的な課題解決」については、単に人事課題ではありません経営課題です。
詳しくは次号以降で学びます。
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