経済危機の今、企業として、今何をなすべきか① 社内諸規則の見直しと整備経営管理コーナー

第13回 2009年04月

世界的不況は、中国も例外ではなく、現在各社は大変なご苦労をなさっています。このため、各社とも大リストラ中です。また、労働契約法施行1年を過ぎて、様々な課題が浮き上がってきています。しかし、本来のリストラというのは人員整理だけではあません。現況において企業が取るべき対処は次の5つであり、就職難の現状は企業体質改革のチャンスでもあります。

  1. 社内諸規則の見直しと整備
  2. 厳しい社員教育
  3. 5S運動の強化・・・連帯感と、厳しい躾、不良資産処分のチャンス
  4. 工会または社員代表者組織の設立と健全な労使関係の構築
  5. 派遣会社との契約を早期見直し

社内諸規則見直しと整備

1)就業規則

お仕着せの制度でよいか

中小企業の多くは、会社設立時にコンサルタント会社から買った、雛形の諸規則をそのまま使っています。そこには、企業の理念も経営方針も反映されていません。

また、コンサルタント会社から買った雛形には、全ての企業に適用できるように、会社が設立されたばかりでは実行不能な項目も盛り込んでいますが、自社に適用しない或いはできない項目は削除したり変更したりしなければなりません。

就業規則は、会社の根本ルールですから労力を惜しんではなりません。

ルール適用は公平に「泣いて馬謖を切る」

実行しない項目が一つでもあれば、その規則は有名無実となります。会社の都合で、適用、非適用があってはなりません。全てが適用できなければ無いと同じです。

何故ならば、会社にとって都合のよい項目だけが有効ということを従業員に押付けることができないからです。例えば、ある従業員を就業規則違反で解雇したくても、会社自体が別の項目(年休など)で就業規則を守っていなければ、その従業員が拒否した場合それも有効となり得ます。

また、解雇すべき他の従業員を解雇しなかった事例が過去にあれば、やはり、その解雇規定は無効といえます。公平な適用を求められるからです。

したがって、諸葛孔明は「泣いて馬謖を切る」ということをしたのです。これは、三国志で有名な話です。馬謖は、孔明の将来の後継者として嘱望されており、孔明も非常に可愛がっていました。

馬謖が命令違反をして作戦失敗し多数の兵隊を失った時、側近の多くがいう、今度だけは許してやった方がよいという忠告を聞かず、決まりどおりに首を刎ねたことからの格言です。

馬謖に情けをかけ、例外を作ることを、冷徹な考えで避けたのです。孔明も人間ですから、可愛がっていた馬謖を切る時には泣いたそうです。しかし、結果は、軍紀が引き締まり精強軍が出来上がったのです。

諸規則は公開すること

なかには、諸規則を公開してなく一部の幹部だけが所持しているという会社も見受けられます。この場合も諸規則は無いと同じです。内容を再確認し、新たな諸規則として、労働者に公開し労働者代表と話し合う必要があります。その上で、決定したものを各職場に閲覧用として設置しなければなりません。

会社諸規則に関する原則は次です。

  1. その会社の理念と実状に添ったものでなければならない
  2.  会社の都合で、適用、非適用があってはならない。
    全てが適用できなければ無いと同じ
  3. 諸規則は全て公開すること、公開していなければ無いと同じ
    (幹部或いは経営者のための内規は、その適用該当者だけに公開で構わない)

2) 労働契約書の締結義務付け強化と位置づけ

労働契約法では、労働契約書が未締結の場合の罰則が明確になっています。

入社して(勤務開始して)、1ヶ月以内に締結しない場合は、賃金を2倍払わなければならず、1年経っても締結しない場合は期間の定めのない契約をしたと見做されます。

2007年までは、試用期間が終わってから契約締結するケースが多くありましたがそれは’通用しなくなったということです。試用期間満了で(本採用には不適だという判断により)解雇しようとしたら、様々な問題で訴えられた次のような事例も発生していますので要注意です。

  1. 労働契約書を締結していないので、賠償金として賃金を2倍払え。
  2. 本採用しないという理由が明確でないので、不採用には応じない。
  3. 不採用理由が明示されたが、元々それが採用条件であることは知らされていない。

高い労働契約書の位置づけ

中国では、労働契約書の位置づけが極めて高く、就業規則よりも重視されます。

就業規則と労働契約書に同じ項目が規定されていた場合には、労働契約書が優先して適用されます。したがって、新たに就業規則その他の諸規定を制定・改定した場合には、過去に労働契約した内容を洗い出し、改めるべき内容があれば契約書の改定の申し入れをしなければ、諸規則・諸規定の改定が適用されませんので注意を要します。

なお、制定・改定した諸規則・諸規定が労働者にとって有利な場合は問題がありません。

もちろん、法規法律に触れる内容は、法規法律が優先されますが、法規法律よりも労働者にとって有利な社内規定および労働契約書はそれが優先的に適用されます。

3) 賃金制度・評価制度と規定

賃金制度・人事評価制度の制定率はきわめて低く、このためのトラブルや弊害が多いのも日系企業の特徴です。

例えば、労働契約書には初任給与は記載しているが、それの支払時期、支払い方法、改定時期、改定調整方法などの詳細規定は「就業規則の定めによる」と書かれています。就業規則を見ますと、賃金に関する条項はありますが「賃金に関する詳細は別途定める賃金規程の定めによる」と書かれているのが一般的です。しかし、多くの企業には「賃金規程」はありません。仮にあっても、一部の者(社長と人事課長だけなど)しかそれを見ていなく、透明性に欠けており、無いと同じ状態になっています。

賃金規程・人事評価規程がないためのトラブルの事例

数多くありますが、代表的なものとしては下記です。

  1. 毎年必ず昇給しなければならなくなった。例えば、「昇給時期:毎年4月」と書かれていれば、昇給を約束しているのですから、必ず昇給が必要です。「賃金見直し(または調整)時期:毎年4月」なら昇給を約束したものとはなりません。
  2. 減給の条項がないため、業績悪化や低い評価であっても減給が絶対にできない。
  3. 人事考課および制度があいまいであり、低い評価をすると不満が出て(中国では必ず不満を訴える)も、それを説得・説明する材料が無く、低い評価による給与格差をつけられない。
  4. 横並び昇給が続くことによる賃金高騰を避けるため、全員を低い水準に抑えることになり、優秀な者から退職される。
  5. 何をどうしたら評価が上がり、どうすれば昇給するのかが明確でない場合、労働者の目標が定まらず、やる気もおきません。結局優秀な者は残ってくれません。優秀な者も、賃金が高ければ辞めないというのはウソです。自己の成長目標とそれによる成果報酬がどうなるか、ダメな者との格差が不明確な企業には残りません。
  6. 本来、どうでもよい労働者だけが永年勤続者になり、期間の定めのない労働者(無期限契約者)となり、会社は衰退する。

4)賞与に関する規定の注意事項

賃金規程のない会社では、賞与に関して就業規則に「いつ、支給する」としか規定していません。

その弊害としては、次の事例があります。

  1. 会社が、現状のように大不況であっても必ず賞与を支給しなければならなかった。
    (支給すると書いてあれば、支給することが義務となる)
  2. 支給日に在職していない(過去1年以内に退職した)労働者から月割りの賞与支給を要求され、応じざるを得なかった。(例えば、前年1年間の業績を基にして1月が支給日の会社の場合、前年の6月に退職した者から、他の者の半分を要求された。12月に退職された者からは全額支給を要求された。)

これらを避けるためには、賃金規程に賞与の支給基準と条件を明記して公開していなければなりません。

事例の①を避けるためには、「賞与は会社の業績によっては支給することもある」と規定。
事例の②を避けるためには、「賞与支給対象者は、在籍○ヶ月以上であって、賞与支給日に在籍する者」と規定する必要があります。

いずれにしても、賃金規程そのものが無ければ何もできませんね。

島根 慶一

佐藤中国経営研究所・上海知恵企業管理諮詢有限公司 佐藤 忠幸

経営管理コーナーでは、中国での企業経営はいかにあるべきか、事例を中心としたご紹介をしています。

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