徹底した5S運動でしつけ教育と不良資産洗い出し経営管理コーナー

第15回 2009年04月

世界的不況は、中国も例外ではなく、現在各社は大変なご苦労をなさっています。
このため、各社とも大リストラ中です。また、労働契約法施行1年を過ぎて、様々な課題が浮き上がってきています。
しかし、本来のリストラというのは人員整理だけではありません。
現況において企業が取るべき対処の中で、今回は5S運動を学びます。

5S運動はキレイにすることだけではない

厳しい躾と不良資産処分のチャンス

5S運動というと、綺麗にすることと誤解されている方もいます。5Sとは、「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」の5つです。

中国でも、日系企業のみならず台湾系・シンガポール系を中心として多くの企業が徹底した教育をして成果をあげ、むしろ日系企業よりも優秀な管理をしている企業があります。日本に比べて、5S運動の歴史が浅く、推進責任者がまだ在籍しているからです。(日本では推進した方の大半が既に定年を迎えているためか、ゼロから運動を推進できる方は少ないようです)

しつけ教育のチャンス

「しつけ」が大事であり、中国人が不得手であることは日本人以上に、台湾系・シンガポール系企業が把握していることもあります。

しつけなくして、企業の存続・成長はありえません。どんない素晴らしいシステムを導入しても、ISO認証を得ても、それを運用するのは人であるからです。

しつけ教育は、続けている内に、それが当たり前になりますが、当初は息苦しくなり、抵抗されます。それで、途中で挫折する企業もありますが、今はチャンスです。

少々厳しくしつけても大丈夫ですよ。

さらに、重要なことは「整理」です。

整理とは、必用な物と、不要な物とを層別し、不要な物を処分すると同時に、再発生の防止策を講じることです。(必用な物を、使いやすく見やすく置くことを整頓といいますが、詳細は清掃・清潔と一緒に後日報告します)

「我社は、5年前に整理したよ」といわれる方もいますが、5年間の垢や膿が溜まっているはずです。企業は生き物です。毎日、進化成長しています。したがって、垢や膿が溜まります。これを取り除く必要性は、何も場所代の節約や整頓をしやすくするだけではありません。

最大の狙いは企業体質の強化です。

皆さんの決算書を見てください。製造業であるなら、棚卸資産と固定資産という項目の比率が非常に大きいと思います。

この資産(財産)の全てが、企業にとって有効・有益なものばかりであるなら問題はありませんが、数十%は不良資産です。

不良資産とは、不良品・不要品・売れない物・使えない物・過剰な物などです。

良品であっても、売れない物や使わない物は不良資産です。これらをなくし再発生防止策をたてるのが5S運動でいうところの「整理」です。

不良資産を処分しなかったらどうなるか?それは、粉飾決算です。利益が出ているように見せかけているだけで、実は儲かっていないということを隠しているということになります。

事例 資産の30%が不良資産の会社

私が調べた某社は、月商6億円、棚卸資産2億円でした。この2億円が全て生きている、回転している資産なら新たな利益を生み出すものですから何ら問題はありません。しかし、更に調べると30%すなわち6000万円は使えない物か、売れない物でした。すなわち不良資産です。銀行など金融機関の不良債権資産(返済されそうも無い債権)と同じです。

何故そんなにたくさんの不良資産があったのか、原因を調べると品質其の他で不良品とはなっていないから製品倉庫や部品倉庫に入庫されたまま放置されていたのです。
この会社の、不良資産の定義は不良品だけだったようです。
不調資産とは、売れない物、使えない物、使わない物も入ります。
不良品だけではありません

この定義で言うと、機械設備も見直せば多くの不良資産があります
機能的には使えても、使わない設備は不良資産です
財産として資産台帳に載せておくのはやはり、粉飾決算です。また、その様な物の減価償却費を、毎期計上するのも大きなムダです。
決算書では利益が出ているが、資金繰りに困るという会社の、実態の多くはこれです。
この際、徹底的に垢や膿を出し切って身軽にしましょう。
そんなことをしたら、「赤字になってしまうよ」?
だから今がチャンスです。
今なら、赤字を出しても目立ちません。
あのトヨタですら赤字ですからね

島根 慶一

佐藤中国経営研究所・上海知恵企業管理諮詢有限公司 佐藤 忠幸

経営管理コーナーでは、中国での企業経営はいかにあるべきか、事例を中心としたご紹介をしています。

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