経済危機の今、企業として、今何をなすべきか④ 健全な労使関係の構築経営管理コーナー

第16回 2009年04月

世界的不況は、中国も例外ではなく、現在各社は大変なご苦労をなさっています。
このため、各社とも大リストラ中です。また、労働契約法施行1年を過ぎて、様々な課題が浮き上がってきています。
しかし、本来のリストラというのは人員整理だけではありません。
現況において企業が取るべき対処の中で、今回は労働者組織と労使関係を学びます。

工会または社員代表者組織の設立

2008年から、就業規則や労働条件の改定をする場合は、工会または社員代表者組織と協議が義務付けられました。また人員整理をするときも同じです。色々な労働施策を打つ場合に重要な役割を果たすのが工会または社員代表者組織です。しかし、工会または社員代表者組織の役割は単に交渉相手だけではありません。

1) 社員が頼りにできる組織となっているか

今年は、どの企業も残業がなく、社員には給与に関する不満が溜まっています。その上で、リストラなど様々な労働施策が打たれます。

中には、点数稼ぎ中間管理職による過剰な労働強化もありえます。こんな時、労働者が相談する相手がいなければどうなるでしょうか。

相談相手がいなければ、数人の仲間で、サボタージュなどの抗議行動に走るでしょう。数人のサボタージュがあっという間に職場全体に、そして全社ストライキへと拡大していきます。現在はインターネット社会ですから一企業にとどまらず、全市に拡大する恐れすらあり、それによる被害は甚大です。

数年前に起きた、大連市や広東省の大ストを思い出してください。数十万人もの労働者が10日以上も職場放棄し、その被害は莫大なものでした。

工会または社員代表者組織が、労働者の相談相手になるためには、労働者の代表が当組織の代表となるべきです。中国の法律による定義ではオーナー経営者、投資者以外は労働者ですから、工場長や人事部長などの会社側交渉当事者であるべき職位の者が、労働者組織の代表に就くことは違法ではありませんが、これが真の労働者代表と言えるでしょうか?

そのような形式的な労働者団体を、労働者は相手にしません。頼りにもしません。

政府も、これではいけないと、代表に高級管理者を選出するなと指導開始しています。大至急選びなおすように工会または社員代表者組織へ働きかけてください。

2) 健全な労使関係の構築

会社が健全な時こそ、労使関係の構築が重要であり、そのような時しか作れません。

会社の将来を左右する、より健全な方向への改革は、労働者の協力無しではできません。お互いの主張や要求を協議するだけの団体交渉から、前向きな協議をできる関係にしなければなりません。それができるのは、過去数十年間それを模索し成功させ高度経済成長を成し遂げた日系企業だともいえます。

3) イザという時、対等に話し合える組織

しかし、労使にとっていつもよい時ばかりとは言えません。今がまさにそういう時期です。

このような危機的な状態の時に、如何に真摯に話し合えるかが最重要課題です。労働者から何でも反対を唱えられたら、会社は何もできません。そうかといって譲ってばかりいては、会社の将来はありません。

お互いに主張すべきはして、譲るべきは譲り、妥協点を話し合う対等な関係を築くべきです。この姿勢は、きわめて難しい注文であることは分っていますが、まずは会社経営者が学習し、労使交渉や協議の場面を通じて、労働者組織に根気よく指導を続けていれば必ず実現できます。

繰り返しますが、まずは経営者の学習が鍵です。

島根 慶一

佐藤中国経営研究所・上海知恵企業管理諮詢有限公司 佐藤 忠幸

経営管理コーナーでは、中国での企業経営はいかにあるべきか、事例を中心としたご紹介をしています。

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