監督者の役割と教育・訓練経営管理コーナー

第18回 2010年05月

今、多くの日系企業は企業体質の転換を迫られています。
日本の下請け的存在から、自ら中国に販路を中国に求め自活を迫れています。中国を「世界の工場」ではなく「世界の市場」という見方に変わっているからです。

そこで、管理者の教育が重要だとはご報告した通りです。しかし、忘れてならないのが監督者の教育訓練です。なぜなら、労働者を直接管理監督する立場に立っているのが監督者だからです。

監督者の役割は重要であり多岐にわたっています。しかし、監督者に、部下の指導方法その他の教育訓練をしなければ、監督者の役目を果すことは困難です。

日本の産業界を育てたTWI(Training Within Industry)

監督者への訓練方法は色々ありますが、最も権威があり基本に忠実なものは、TWI(Training Within Industry:監督者訓練法)です。

日本は、社団法人 日本産業訓練協会(日産訓と略す)がTWIを1955年に、MTP(Management Training Program=管理者訓練)と共に導入されて以来、TWIの原則性と実践性が近代的・科学的管理の基盤をなすものとして、5S運動と並んで今日まで生産部門、サービス部門の他、あらゆる業種においてその有効性が高い評価を得ており、企業内教育の原点として広く活用され、日本の産業発展の基礎となっています。

近年では、日本のみならず世界各国でも監督者教育の中心として普及しており、TWIは企業活動の推進力となっています。
中国でも、同じことをしなければ企業として存続は難しいと思わなければなりませんので、TWIについてご紹介します。

監督者の必要条件:2知識+3技能

必要2知識

  • 仕事の知識に明るいこと
  • 職責の知識を熟知していること

必要3技能

  • 仕事の管理、部下の訓練ができること:JI
  • 仕事を改善する能力があること:JM
  • 部下を上手に扱う能力があること:JR

このことから、TWIには「JI」「JM」「JR」の3つのトレーニングコースがあります。
これらのコースを企業内で行うには、トレーナー資格を持った講師を派遣してもらうのが一般的ですが、監督者が多い企業は、社内にトレーナーを多数抱えています。

各コースの概要

JI(Job Instruction Course)仕事の教え方

こんな場合に   JIで教える
部下や後輩が仕事について 知らない
できない
うまくできない
仕事を正確に、迅速に安全に教えるための指導方法を習得する

コースの要点

相手が覚えていないのは、自分が教えなかったのだ!
訓練必要点を明確にし、訓練予定表を作る

  • 相手の能力に合わせて、作業分解シートを作成する
  • 教える前にすべてのものを用意する
  • 正しい手本を示すため、作業場を整備する
4段階法に従って指導する
第1段階 習う準備をさせる
第2段階 作業を説明する
第3段階 やらせる
第4段階 教えたあとを見る

JM(Job Methods Course)改善の仕方

こんな場合に   JMを活用する
仕事の方法手順について よくない
たりない
楽でない
好かれない
仕事の方法・手順・設備などの改善ができる手法を習得する。

コースの要点

もっとよい方法はないか
既存の労力、機械および材料を最も有効に使うことによって、短時間に、高品質のものを多量に生産するのに役立つ実際的方法を学ぶ。

4段階法に従って指導する
第1段階 作業を分解する
第2段階 細目ごとに自問する
第3段階 新方法に展開する
第4段階 新方法を実施する

JR(Job Relations Course)人の扱い方

こんな場合に   JRを活用する
仕事上の人間関係について 気がない
やらない
和がない
職場の人間関係をよくするために、対象と事実に基づく職場の問題処理の仕方を学ぶ

コースの要点

監督者は部下と共に成果をあげる。人との関係をよくする為の基本を習得する。

  • 仕事ぶりがよいかどうか当人に言ってやる
  • よいときはほめる
  • 当人に影響ある変更は前もって知らせる
  • 当人の力をいっぱいに生かす
4段階法に従って指導する
第1段階 事実をつかむ
第2段階 よく考えて決める
第3段階 処置をとる
第4段階 あとを確かめる

4段階に従って指導する

いずれも、①習う準備をさせる、②作業を説明する、③やらせる、④結果を見る、などの4段階で教え、学ぶので、実践的に習得できます。そして、基本的な考えは「相手が覚えていないのは、自分が教えなかったのだ!
これは、コミュニケーションの原則と同じです。
すなわち、相手が行動しないのは「伝えてなかったまたは伝える技術が下手だった」ということと同じです。
この指導方法は、全ての仕事の原点でもあり、製造業だけでなく、サービス業や間接部門においても極めて有効です。是非勉強してください。

「社団法人 日本産業訓練協会(JITA)」とは

1955年に当時の通産省・労働省・日経連が中心となって創設された社団法人。
発足以来一貫して、MTPとTWIの研究とトレーナーの養成を行っており、産業界の人材育成の支援活動を行っています。
詳しくはhttp://www.alpha-net.ne.jp/users2/sankun/

詳細および質問とご意見は下記へどうぞ。
tada-sato@mvb.biglobe.ne.jp

島根 慶一

佐藤中国経営研究所・上海知恵企業管理諮詢有限公司 佐藤 忠幸

経営管理コーナーでは、中国での企業経営はいかにあるべきか、事例を中心としたご紹介をしています。

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